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歴史と文化の2古都めぐり
■勝手に店を決めるホテルの親父
テルミニ駅から路上駐車の列を抜けてホテル・コントルノにたどり着くと、小さいホテルなので教壇みたいなフロントにはオヤジ一人しかおらず、そのオヤジが愛想良く手続きをしてくれた。 思ったより早く着いたので、ちょっとホテルの周りを散歩しようと下に降りて鍵と貴重品を預けたら、フロントのオヤジが言う。
「食べに行くのか?」

 

飛行機の中では動かなかったし、機内食も適当に食べたので、夜はピッツェリアに行ってピザでも食べよう!と言っていた私たちは「ノー」と言った。
続いて「どこに行くのか?」てなことを聞くので、私が「そのへん」と答えると、オヤジはやおら「待て」と手をかざして、引き出しやらノートやら何やらをひっくり返してばさばさと書類を落とし、そして奥の部屋に引っ込んだり出てきたりし、ついに見つけた名刺カードの束を満足そうにめくり始めた。

私は店でも紹介してくれるんだなと思った。カードを受け取って、行かなくても別にいいやと思っていた。こっちがくれって言ったんじゃないもん。 が、オヤジの首がひねられ、「OK」みたいなことを言って、フロントカウンターから出てきた。何が起こるのかと思って見ていると、オヤジはにこっと笑って私たちをホテルのドアに導いた。げ、道でも教えられるのかな、どうせ早口で聞き取れんぞと思っていたら、オヤジはホテルの斜め前のレストランを指さした。


「トラットリア アンジェロ」
え? 私たちは硬直してオヤジを見た。こんな目の前やったら、オヤジの目を盗んで他の店に入ることもできんやないか。 そしたらオヤジは私たちが、見知らぬ町で見知らぬ店に入るのを恐れているのだとでも思ったらしい。オヤジは「ほらほら、大丈夫」みたいなことを言って、誰もいなくなったフロントをほっといて(いいのか!?)、道を渡り、なじみの店に「よう!」って感じで入り、店員さんにこの子らをよろしく、みたいな挨拶していた。
ちょっと待て。
私たちは呆れつつ、これはイタリアの洗礼?と思うことにして、じゃあピザじゃなくなったけど、軽く食べようってことで妥協した。オヤジは私たちを店員に引き渡すと、満足して帰っていった。
料理はまぁおいしかったし店員もかなり陽気だったが、塩味が強かった。

▲いや、いい店なんだよ。

  食べた後にやっぱりホテルの周りを一周しとこうと思って歩いた。 それにしても緯度が高いせいか、夜九時でもうっすら明るい。都会の明るさじゃなくて、本当に空が明るい。こりゃ夜遊びに燃えるはずだわと思った。 ホテルに戻ると、オヤジはルームナンバーも言ってないのに鍵をくれた。

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